加藤けんいち日記

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山古志を訪ねて
 16・17と、中越地震で甚大な被災のあった旧山古志村を訪ねました。4月16日に行われた上映会「掘るまいか」のときに、山古志からお越し頂いた小川晴司さん(67)に、映画の中で登場した日本一長い手堀トンネルである「中山隧道」、震災の爪跡がまだそのまま残っている山古志の集落、そして山古志が長い間受け継いできた村の行事である「牛の角突き」をご案内いただきました。

 中山隧道。今でこそ、隣に2車線の立派なトンネルがあるので日頃は使われることがないですが、地震でも崩落せず、掘られた当時の姿をそのままとどめています。全長約900メートル。これを、戦前から戦後にかけての16年間という歳月をかけて、ツルハシだけで村民が掘りぬきました。
 この日は蒸し暑かったのですが、トンネル内は寒いほどの冷気。往時をしのんで、ロウソクの明かりだけで歩いてみましたが、暗く、長い。掘り始めの頃は1日20cmくらいしか進まなかったとのこと。16年間、大出水や戦争などの困難をはさんで、よくぞ1キロ近い距離を、放り出すことなく掘りぬいたものだと、その粘り強い営みを考えただけで言葉を失います。私たちが日頃直面する苦労など、ほんとうにかわいいものだと思えてきます。

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 全村が全壊指定を受け、これまでの家には住めないとのお達しがある中で、小川さんはコツコツと自宅の修復作業に取り組んでいました。山古志では小川さんだけだそうです。長岡市内の仮設と、山古志の自宅を、数日ずつ行ったり来たりされています。長岡や小千谷、川口など、平野部での復旧工事需要のため、全壊指定を受けた山古志には職人さんが確保できず、ずーっと前から頼んでおいた大工さんがようやく来てくれたそうです。
 家の中にはツバメが巣を作っており、今子育ての真っ最中。大工さんの工事が始まっても、小川さんはこの「同居人」たちを追い出すことなく、むしろ巣が落ちないように補強してあげていました。
 風呂場が壊れてしまったので、道路に面した庭先に、浴槽と薪の釜をすえつけ、風呂場にされています。養鯉業の復旧に奔走している息子さんのために、廃材を使って風呂を沸かしておられました。

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 小川さんに、村内を案内してもらいました。テレビの画面や新聞の写真では想像もつかない、甚大な被害でした。何反もの美しい棚田を抱いていた山の斜面が、根こそぎ谷に崩落していたり、幅100メートル、深さ20メートル以上の谷が、膨大な土砂で埋め尽くされていたり。谷筋に近い民家は完全に埋まり、中には築半年、3000万円の費用をかけた民家が水没していました。崩落・水没した幹線道路の復旧にはまだ相当の時間がかかりそうです。その奥には、車も重機も入れないために被災時のまま放置されている民家や田畑があるのです。
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 写真や往時の映像で紹介される山古志の美しい棚田の景観は、残念ながら失われています。農道も田んぼも、縦横に走る大きなひび割れで、とても作付けなどできません。

 村を一望できるところで見渡すと、本当に、地球が動いたのだとしか思えない、地形の変わり方です。長い地球時間から見れば、人が住んでいようがいまいが、山は崩れ、隆起し、谷は動いていくのです。その中で「被災」する人間の悲哀は、地球に生きるものの定めとして、受け入れるしかないのでしょう。
 小川さんの姿をみていると、悲しみや憤りを超えて、非常に淡々としているように見えるのです。厳しい山の自然の中で生き抜いてきたからでしょうか、どこかで「被災」はパッと割り切り、ここから先どうやって復興していけるか、そのために日々できることを淡々とこなされている、そんな風に見えるのです。

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 翌日、今は長岡市のスキー場に仮設会場ができている、伝統行事の「牛の角突き」を見ることができました。円形の闘牛場、取り囲む斜面に人がビッシリはりついて、応援を送ります。牛を励ましたり誘導したりする「勢子(せこ」と呼ばれる男衆が30〜40人、周りで威勢よく声をかけ、体重1トンもある牛たちが「ガツン!」という音を響かせてぶつかり合います。入場してくるときや、戦う前のひとときに、飼い主や勢子と牛の間に交わされる無言のコミュニケーションが感じられます。一緒に生きてきた同士として、掛け替えのない存在なのですね。

 この山古志の2日間については、8月発行のパワーズでも整理してご報告します。間違いなく言えることは、訪れた私たちにとって、もうひとつの故郷ができた、ということです。来年9月の帰村以降、もう一度訪ねることを約束しました。
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